今月の漢方




<鬱病(うつびょう)>

私たちは、心も体も整わなければ<幸せだ>と感じることが出来ません。脳の中ではその為のホルモン物質が分泌されています。脳の中では毎秒10万回以上の化学変化が起こっていて、多幸感を増す物質がいくつも造られています。鎮痛効果のあるエンドルフィン、不安を鎮め憂鬱を取り除くセロトニン、喜びを運んでくるドーパミンなど。鬱病、パニック障害、痴呆症などは、すべて、この脳内物質のバランスの崩れかと思われます。カウンセリングにて生活習慣や精神的な傾向を知る作業などをじっくりと行い、客観的に自分を見つめる練習をすることも大切なことですが、漢方薬には心を整える力のある柴胡加竜骨牡蠣湯や、血虚を改善し脳に酸素をたくさん送る為の四物湯・当帰四逆呉茱萸生姜湯などの他に、脳の興奮を鎮めて脳内セロトニンの分泌を整える冬虫夏草など、幸福感を高める薬草がたくさんあります。




<喘息>

気温差や花粉の時期に起こりやすい病態です。気道の粘膜は、ごみ、花粉、細菌、ウイルスなど体にとって有害な物質を排除しようとします。喘息の方の粘膜は、刺激に対して過敏性が高く、慢性的な炎症を起こした状態になっているので、少しの刺激に対して敏感に反応してしまいます。発作時にはヒスタミンやロイコトリエンなどが放出されて、気道の筋肉が痙攣・収縮、粘膜のむくみ、分泌物の増加で、内腔が狭くなって呼吸困難になります。漢方薬では粘膜の浮腫みと炎症を取る麻黄や石膏などの薬味を使います。麻黄には気管支痙攣を鎮めるエフェドリン作用があり、甘草との取り合わせで気管支を広げることが出来ます。証を診て漢方薬を選び、続けて服薬なさると、アレルギー自体が軽くなってきて、体質改善につながります。活性酸素除去サプリやΩコンプレックスは炎症を抑えるために一役買います。




<蓄膿症(ちくのうしょう)>

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)になると、鼻がいつも詰まっている感じ、頭が重い、青い鼻汁、血液などが出るなどの症状がみられます。鼻には8つの穴があいていて、それを副鼻腔といいますが、慢性副鼻腔炎は、この副鼻腔粘膜に炎症が起き、副鼻腔内に炎症による膿がたまっていく病気です。漢方薬では清熱剤、駆?血剤などを組み合わせて炎症を取ります。今年は花粉の飛散量が多くて、多くの方が花粉症でお困りですが、花粉症から副鼻腔炎に移行している方もおられます。もともと体質として、腺病体質であり顆粒球の優位な方は、花粉という刺激や、ストレス、疲れがきっかけになって、蓄膿症になることがあります。活性酸素除去のサプリメントやプロスタグランジンE2レベルを下げるためのΩコンプレックスなどを漢方薬と併用して使うと効果的です。




<掌蹠膿庖症(しょうせきのうほうしょう)>

掌蹠膿庖症手の平や足の裏に小さな膿を伴ったぶつぶつが出来る病気ですが、原因はビオチン欠乏ではないかと言われています。ビオチンは、ビタミンB群に属するビタミンで、もともと腸で作られるものです。これが欠乏すると腸管免疫系で代謝障害が起こり、抗体が過剰に作られるようになります。その抗体が骨膜に沈着すれば掌せき膿庖症骨関節炎になります。油ものの食べすぎ、ストレスによる腸内細菌のバランスの崩れ、抗生物質の連用などがビオチン不足になる大きな原因。掌蹠膿庖症、アトピーなど皮膚炎を発症している人はまずは小腸の善玉菌を増やし、ビオチンを摂取することが慣用です。小腸の環境改善のために、清水ビオチン、腸内細菌としてP−乳酸・ビオネ・陽命源・スーパーバイオライトなどを併用していただきます。漢方薬はその時の皮膚と骨の状態によって清熱剤たとえば超婢加朮湯や白虎加人参湯、桔梗加石膏などを状態を見ながら加減して使います。




<乾癬(かんせん)>


 乾癬(かんせん)は中国では銀屑病という病名で50歳前後に発病する病気とされていましたが近頃は若い方にも見られることが多くなりました。発症部位は髪の毛の生え際、肘や膝、わきの下などが多いようです。境界に鮮明な紅斑を伴っていてぶ厚い銀色の鱗屑(りんせつ)がみられます。出産やストレス、動物性油脂の摂りすぎなどがきっかけになっていることが多く、洋食中心の食生活にやはり問題があるようですね。治療としては脂質代謝やホルモンバランスを元に戻してゆくことを目標とします。皮膚の表面近くにある血管が炎症を起こしていますので、漢方薬ではまずは清熱剤・麻黄剤の適応になります。当店ではそのほかに炎症を抑えながらホルモンを整えるΩコンプレックスや腸でのビオチン生成を促す腸内細菌、ビオチンそのものを服薬していただき、体質自体を変えるようにいたします。



<動脈硬化>

動脈硬化につながる因子に血糖値の問題もあるのです。高脂血漿や高血圧、ストレスなどが動脈硬化の大きな原因であるのは確かですが、近頃では、血糖値の問題も動脈硬化につながると考えられるようになりました。過剰に分泌されたインシュリンは肝臓での脂肪合成を高めてしまいますし、食欲中枢が刺激されて肥満にもなります。また、足の血管に動脈硬化が起きると、はじめのうちは足のしびれや異常な足の冷えを感じますが、歩くと痛いけれど休むと痛みがなくなる、と繰り返すようになるようです。漢方では、駆瘀血剤を中心に、血液がねばらないように地竜や桂枝、紅花などを使いながら、脾虚への対応をいたします。痛みがある場合は特に、煎じ薬は有効です。