婦 人 科 疾 患


1 不妊症


不妊症の原因はさまざまですが、生理代謝を中心に考えてみると、

@貧血 Aカルシウム欠如 Bストレス性のホルモンバランス異常 C機能不調和を識別しなくてはならないと思います。
@貧血はヘモグロビンの数値ではわかりません。もっと奥が深くて、いろいろな角度から見てゆく必要があります。鉄は、胃酸によって「吸収される形の鉄」になるために、胃酸が十分に出るということが必要になるのですが、このストレスの時代、常に緊張状態の我々には胃酸を出す能力までもが減じているのが現実です。胃酸の出ていない現代人は貧血になる可能性が高いということです。また、ストレスにより消耗するミネラルがあります。亜鉛やビタミンCは一番消耗するものです。それらが体にないということはやはり貧血になるということでもあります。鉄とVB,亜鉛、銅、葉酸などがないと造血しないからです。血液は命そのものです。赤ちゃんは血液を通して栄養を取り込むのですから、お母様の血液が薄ければ、生物として繋がるチャンスを逃しやすいということです。
Aカルシウムは骨を作ります。骨と血液が赤ちゃんの命綱です。甘いお菓子ばかりを食べていると、またはストレスばかり受けていると血中のカルシウム濃度はどんどん上がります。骨からカルシウムが溶け出してくるのです。
Bストレスを過度に受け続けていることはまた副腎を弱らせます。そしてホルモンのバランスが崩れてしまい、異常な冷えを感じ続けることになります。@からCのどのパターンにおいても、漢方薬は底力を発揮します。柴胡剤や去寒剤、駆瘀血剤のいずれかを使い非常に即効的に状態を動かします。体温が36度5分以上あるように、処方を組み立てます。@からCのどの原因があるのかも見極めながら、ヘム鉄やVB5、Ωコンプレックス、アミノ酸なども同時に使用。体全体をもとのリズムにもどしましょう。基礎体温表がでこぼこしている場合は大体貧血があります。十全大補湯や四物湯はそういう場合のベースとなる処方です
C卵を育成する力が弱い場合は温経湯と人参湯を合わせた処方が効果的です。でも冷えがあるときはまずはそれを収めてからということになります。サフランや田七人参を添えると血流が改善されます。田七は肝臓や心臓も強化します。当帰四逆呉茱萸生姜湯は非常によく使う処方です。



2 冷え


冷えという問題は女性に関わらず人間にとりとても大切な問題です。体温が下がるということはウイルス感染をしやすい、酵素の働きが悪くなることに直結するからです。体温が36度を下がらないように体温を上げる去寒剤や活血剤を使用。当帰四逆呉茱萸生姜湯や四物湯、血腑遂瘀丸、田七人参などを服薬し物理的にも冷やさないように特に下半身を暖めてください。心臓から足に降りた血液が戻るときに冷えたままで心臓に戻ると子宮やお腹は冷たい血液にさらされます。冷えは大病の元。女性の場合は子宮筋腫や子宮内膜症、生理痛、生理不順につながるものです。


3 子宮内膜症・子宮筋腫・生理痛・生理不順


内膜症も筋腫も生理痛も生理不順も同じ土俵にあります。
<基礎体温の低下と貧血>若いころから生理痛に悩まされている人は体温が低いまたは貧血の人が多いのです。
<お食事の影響>先述したようにもともと代謝の悪い人が好んで乳製品や油の料理をたべてしまうと甲状腺の状態が著しくバランスを崩してしまい、女性ホルモンにも大きな影響を与えてしまいます。細胞膜の脆弱化、劣化は遺伝子の正しい複写に影響を与えるため、正常細胞が正しく作られないというとても危険な状態をもたらします。そのためポリープが出来やすかったり癌化し易くなったりします。何故か貧血があると余計に甲状腺が弱る。これはどの教科書にも書かれていないことですが経験から間違いないと思います。身体はつながっているので、生理痛が治れば細胞膜が元気になっている証拠として受け止めてよいかと思います。
<瘀血の治療>まずは血液を温め流すという処方が使われます。当帰四逆呉茱萸生姜湯や桂皮茯苓丸、折衝飲などが頻繁に使われるものです。貧血があれば、ヘム鉄とビタミンCは必ず服薬していただきます。オメガ3、6系の油を使い、炎症を遠ざけることもしなくてはなりません。痛みは炎症の現れですから、炎症傾向を改善する際には、オメガ系の油を使い、炎症を起こすホルモン物質(プロスタグランディンE2)を減らしてゆくように組み立てをします。子宮筋腫がそれ以上大きくならないように、炎症が起きにくいように、身体全体の代謝系を元に戻してゆく作業を最低4ヶ月はしなくてはなりません。じっくりと治療なさると、瘀血治療の得意な漢方ならではの結果が出ます。


4 甲状腺機能失調


<甲状腺機能低下症>少ししか食べていないのにすぐに太ってしまうとか、身体がだるくて仕方ないとか、皮膚炎がなかなか治らないとか、何気ない変化として出てきます。髪の毛が抜けてきた、皮膚がたるんできたなども、甲状腺機能の低下に伴う症状のひとつで、皮膚科にかかり甲状腺とわからずに別の治療をしてしまうことがあります。また、何事に対してもやる気が起きないという甲状腺機能低下症の症状を間違えて抗欝剤を飲んでしまったという話もよく聞きます。低下症の場合は、L−アミノ酸(アルギニン・L−メチオニン・グルタミン・コラーゲン配合)+ヘム鉄が大変効果的です。症にあった漢方に合わせて飲むと代謝が確実にあがってきます。
<甲状腺機能亢進症>やせてくることが多く、目の輝きがへんにぎらぎらしてくる、という特徴があります。症状としては低下症と重なることが多いので血液検査の数字で判断することが必要です。いずれにしても、大きなストレスが入った時やストレスを受け続けていた挙句に発症することがありますが、もともとは血液の状態はバランスを崩していることが基本にあります。

低下症も亢進症もMCV,MCH,MCHC,フェリチンなどの血液検査の項目を見てみるとF−T3,F−T4、TSHなどの数字との関連があることに気がつきます。たとえチラージンを飲んでいても、貧血の治療をきちんとしていないと、ホルモンのアンバランスはなかなか改善しないようです。近年、皮膚炎、アトピーと甲状腺の関係を重大視して当店では治療をさせていただきます。一人ひとりの証をみながら、処方はさまざまですが、十全大補湯で造血する力をつけるのも手っ取り早いやり方のひとつです。